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○ |
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森 良子
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異国の地に心渇きて空を仰ぐ吾に音なく降りかかる雪 |
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粉雪は音なく降れり異国の地着飾りて行く人にも吾にも |
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評）
二首とも推敲して一段とよくなっています。 |
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○ |
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えめ |
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終業のチャイムに君は席を立つ視界の端に君の背を追う |
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クリスマスの話題に社員は帰りゆく僕は作業のペースを守る |
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評）
「視界の端に」に実際感があり、作者の気持も感じとれます。
「クリスマス」の歌。毅然とした作者が出ています。
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○ |
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尾部 論
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夕映えはアブスの窓を仰ぎ祈るバスクの少年のシャツを染めたり |
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ＨＰに今うどんを啜ると書込みありチューリヒのハムサンドは冷たい |
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評）
日本にいるのは母か妻か恋人か、どの場合でも感銘のある歌です。 |
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○ |
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半沢 宋一
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六識を薄藍に染む明けのそら地には伽藍の影精緻なり |
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評）
連体だから「染むる」。「六識」はすべての知覚なのであろう。 |
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○ |
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えめ |
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誕生日に母より給うティーカップ今年はペアで送られて来ぬ |
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棚の奥にペアのティーカップがありて伏せられしままに五年を過ぎぬ |
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評）
物語的連作。 しかし、物語だけに終っていない。 |
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○ |
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倉田 未歩 |
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そのシャツと上着が合うか合わないか日曜の朝はけんかで始まる |
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評）
かく捉えると平凡な日常も平凡でなくなる。 |
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○ |
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北夙川 不可止 |
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道凍る北の新地をインバネスの裾翻し紅茶屋へゆく |
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評）
仮構によって作られた作と思われるが、その仮構の中に作者の心が感じとれる。 |
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○ |
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深山 猪手 |
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正月の休み明けから休まれぬ教授の顔は痩せていませり |
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田の畦も道路も白く埋める雪に境界もなくただ広がれリ |
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評）
停年近い老教授なのだろう。しかし、篤実な人柄なのだろう。
「埋めたる雪は」としてはどうだろう。境のない雪は暗示的である。 |
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○ |
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下野 雅史 |
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珍しきイソギンチャクの汁啜り吹雪く浜から海を見渡す |
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評）
作者の心象に独自さが感じとれる |
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○ |
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彩 霞 |
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今日も又つないでた手をそと離しギター抱えてまたねと笑う |
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評）
「又」「そと」の語が大事な役目を担っている。 |
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○ |
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長沢 英治 |
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風は右 水は左に流れをり 板橋渡る村の葬列 |
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評）
上句少し気分的だが、下句の描写により救われている。 |
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○ |
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そら |
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「あけましておめでとう」とは言うけれど部屋はそのまま髪もそのまま |
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評）
素朴なところを買いたい。 |
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