新アララギとは

「新アララギ」ホームページへようこそ

 「新アララギ」は、平成9年末わが国の文化財とも言われていた短歌雑誌「アララギ」終刊ののち、その主義主張である「写実」「リアリズム」短歌の一層の発展を願って、平成10年改めて同志を集め、宮地伸一を代表として再出発した結社、月刊誌「新アララギ」を発行しています。「結社」というのは、志を同じくする者が集まって、その拠出する会費によって運営する組織のことです。
 その短歌作品は、正岡子規以来、伊藤左千夫(小説『野菊の墓』の作者)、長塚節(小説『土』の作者)、島木赤彦、斎藤茂吉、中村憲吉、土屋文明などの偉大な指導者に恵まれて、一貫して「写生」「写実」「リアリズム」の手法を堅持して来ました。ひとしく「写実」の立場をとっていても、その人により、時代により、変化してきました。これからも変わってゆくことでしょう。以下にその先人の作品を一首ずつ挙げておきます。

 正岡 子規  くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨の降る
 伊藤左千夫  今朝のあさの露ひやびやと秋草やすべて幽けき寂滅ほろびの光
 長塚 節   馬追虫うまおひの髭のそよろに来る秋はまなこを閉ぢて思ひみるべし
 島木 赤彦  月の下の光さびしみ踊り子のからだくるりとまはりけるかも 
 斎藤 茂吉  死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞こゆる
 中村 憲吉  洋館の椿をゆする疾ち風ピアノ鳴りつつ弾音はやし
 土屋 文明  西方にはざまひらけて夕あかし吾が恋ふる人の国の入り日か

 基本的な考え方として、現実を直視しながら日々の生活を中心に詠って行けば、歌の材料が枯渇することはありません。世の中は日々に新しく、日々に進みますし、「言葉」も変化してゆきます。今ここで人々に伝えたいのは、現実をよく見、現実から離れないでいさえすれば、五七五七七の定型詩は誰にでも作れるものだということです。

 短歌を作り始めて、まず最初の目的は歌を詠むことの楽しさを知ることでしょう。歌を詠むことは自分自身と真摯に向き合うことでもあります。日々の暮しのなかで、心に沸き上がる思いを正直に受け止め、それを三十一文字に纏めあげることは無上の喜びです。それを積み重ねて行けば一人の人生の足跡となり、一人の人間の物語を紡ぐことにもなるのです。
それは短歌が内省の文学とも言われる所以でもありましょう。

 このホームページは発足以来、参加者の皆さんに歌を詠む愉しさを伝え、共に学びながら作歌の手助けになればと考える運営委員によって、今日まで続いてきました。ホームページに参加しながら真剣に短歌を勉強したいと思うようになった方は、どうぞ「新アララギ」に入会して下さい。作歌を始めるに当って年齢は関係ありません。若い人々はそのエネルギーを、年配の方々は豊かな人生経験を力に、一緒になって「写実短歌」の新生面を開いてみようではありませんか。
 余り難しいことを考えずに、まず作ってみることです。そして作り始めたら継続することが大切です。雑誌を手に取ってみたいと思う方は発行所に連絡してください。

 「新アララギ」では現在、代表、雁部貞夫以下、實藤恒子、今野英山、大窪和子、阿知良光治、谷夏井の6名が月々の作品の選に当たっています。令和5年まで選者であった大井力の作品は、今後も「選者等の歌」に引き続き掲載されます。