短歌雑記帳

アララギ作品評

 新アララギ10月号選歌後記    倉林 美千子

 歌はやはりそれぞれの作者の生活の中で無くてはならぬものになっていると確信した。

至るところ付箋挿まれ色変りしアララギ開くにたやすく破る
捨てむと決め読み返しゐるアララギを捨てずに置けと夫言ひくるる                北町 葉子

 古い作者のアララギに対する気持が伝わってきて何かほろりとする。夫なる人も良くそれを受け止めていて温かい。

洗濯板におむつ洗ひて育てたる娘は掃除をロボットにさす
オール電化の厨に挿したるアマリリスあつちとこつち向きて咲きをり               岡松 末子

 そのまま通り過ぎようとしたが、この人の生き方がそもそも軽妙なのかと楽しかった。

娶りたる子は本籍を変へ自らの戸籍を作るしかと生くべし
家の為国の為とはゆめ言はぬ二人は言葉優しく暮らせ
                    小池 洋子

 前の歌によれば「四十八にして良き少女」を娶ったとある。大きな安堵と喜びがしっかりと伝わってくる。

傍らに「新アララギ」を置き眠る夫癒ゆる日を吾は信じむ
霧島も桜島も見えずただ曇る空にゆらゆら赤き入日の
                    東口 雪子

 お元気な夫君にお会いしたのは宮崎の時別歌会の時だった。真剣に歌と向き合っていらしたがその姿が目に残っている。回復されることを私も信じたい。二首目の結句の言いさしは作者の不安を表現して妙。

子には子の考へあらむながき勤めの銀行を辞めむ心を明かす
老いてゆく父母吾らを思ひしか家業を継ぐと子は帰り来ぬ
                    市来  栞

 心強い息子さんを持った幸せが行間に滲んでいた。

(平成二十九年十月号より)

(漢字は新字体に、仮名は新仮名遣いに書き換えました。)



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