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HP運営委員の小松昶さんの歌が「現代短歌新聞」4月号11面に 「奈良県の歌人」として掲載されています。 「プーチンは見よ」と題し現在も続くウクライナ侵攻への強い 批判と怒りを詠んで私達の心に訴える5首です。 冒頭に作者の弾く「鳥の歌」はスペインのカタルーニャ民謡を チェロ奏者のパブロ・カザルスが演奏して世界的に広まり、彼が平和を求める メッセージと共に国連本部で演奏した曲です。 ・ウクライナ偲びて「鳥の歌」を弾くヴィオラの弓の震へるままに ・侵略非難の安保理決議を侵略者が拒否する有り難き常任理事国 ・涙浮かべ死にたくないと震へゐるウクライナの幼をプーチンは見よ ・在日のウクライナまたロシア人こぞりプーチン・ストップ叫ぶ ・出鱈目な理屈を捏ねて侵略を古今東西飽かず繰り返す
HP運営委員で本誌選者でもある大窪和子さんの歌が「現代短歌新聞」4月号1面の「現代の作家」に12首掲載されています。ご子息の突然の病と治療、ロシアによる一方的なウクライナ侵攻(と思われる)など「人の行為」の歌が季節感を伴いながら心に深く訴えてきます。 ・部屋すみにしゃがみし夫の立ちあがり追儺の豆を掌に置く ・思はざる病を身に受け入院せし子よりの電話待つ日々にして ・いづれ翳どちら日向かわからねど病院を分つ見えざるものが ・面会禁止のボードの向うガラス戸のさらに向うにパジャマの息子 ・点滴を提げたるままに立つ姿表情は見えず白髪目に立つ ・ロボットにて折りし精緻なる折鶴を見せて下さる外科医師のまへ ・垣を越えはつかに咲ける白梅の花につぶやくマスク外して ・声しゃがれかすれて掛かりくる電話大方のことは終へぬと微かに ・精巧なるロボット操作は人が為す声帯の神経に傷がつきしと ・世紀的なる疫病のさなか隣国をただ身勝手に攻むるも人なり ・ホモサピエンスの悲しき病この星に殺戮止めぬ病める人々 ・キッチンの窓辺の棚をむきになり光らせて過ぎてゆきし午後なる
当HPアドバイザーの小松昶氏は医師としてコロナ禍を医療に献身されながら、新アララギHPの運営に携わっておられます。今回、下記の催しに参加されますのでご紹介いたします。氏の短歌に触れる良い機会になると思います。(生出演かビデオ出演になるかは現在未定とのことです。) 《現代短歌フォーラム2022「コロナの時代の短歌」》 主催:一般社団法人 現代歌人協会 ◆会場 学士会館(東京・神保町駅A9出口より徒歩一分) ◆日時 2022年3月27日(日)13時30分〜17時(13時に開場) ◆参加費 2,000円(現代歌人協会会員は無料) ◆プログラム (総合司会:大松達知) 開会あいさつ 坂井修一 講演 永田和宏 小松昶・犬養楓による「コロナの医療に当たった歌人からのメッセージ」 鼎談「『二〇二〇年コロナ禍歌集』を読む」 中川佐和子+田口綾子+川島結佳子 (司会:吉川宏志) 参加ご希望の方は、連絡先を明記の上、3月15日までに下記のいずれかでお申し込みください。参加費は当日支払いです。 郵便 〒170-0003 東京都豊島区駒込1-35-4-502 現代歌人協会 現代短歌フォーラム係 電話 03-3942-1287 ファックス 03-3942-1289 メール jimukyoku@kajinkyokai.com ※ 『二〇二〇年コロナ禍歌集』は、当日販売いたします(500円)。本をお持ちにならなくても、支障はありません。 追記 新アララギ2月号に小松氏の第3歌集『撤退』の評が掲載されています。 また、この新アララギ通信では【106】に「小松昶歌集『撤退』のご紹介」として記されています。加えて、以下のような、読み過ごしがたく心に沁みる作品も多く掲載されていますのでご紹介します。 ・茜色滴る桜のもみぢ葉の尖(せん)ことごとく大地を指せり ・街川は枯葉と芥に覆はれて小さき群はしきりあぎとふ ・春の蚊の音なく浮かび我と共に快速急行に運ばれてゆく ・バス停に金をせびりし少年よつつがなくあれ浸水の町に ・汝の使ふロッカ―の扉へこみをり何に荒れたる今日の心か ・告知なき騙しだましの治療に耐へず麻酔科を選りき医学生われは ・縄張りを争ひ殺し合ふ稀なる種霊長目ヒト科いつまで存(ながら)ふ
・ヤンチャする吾に灸すゑ祖母曰く「五黄の寅の子未来開けと」 昭和十三年十二月生 ・田原坂白兵戦の太刀の風すさまじかりしと会津の族(うから)ら伝ふ 読・西南役戦史 ・熊本城の囲み突破し守将谷干城を救ひしは会津の山川浩 ・西郷さんと親しみ言ひし会津兵ともに賊軍と呼ばれし故か ・佐川官兵衛戦死の跡を訪ねむに余りに遠し阿蘇の国原
米安幸子さんは8月でホームページ運営委員を退かれました。 この度、現代短歌新聞に作品五首が掲載されましたので ご紹介いたします。 東広島市在住の作者の平和を願うメッセージ性の高い心打たれる作品群です。 放鳩 米安 幸子 疎開して被爆まぬかれしわれ老いてサーロー節子氏の講演を聴く 広島に地獄をみたる君が念(おも)ひ「人間と核兵器とは共存出来ぬ」 死の街の生き証人きみを乗せ岸へと運びし「ICAN」は船 核禁条約批准要望書に広島の知事も市長もことし署名す 八・六の参加国百近し平和メッセージ大いに期待す 平和記念式典
うたをよむ コロナ禍の今を詠む 吉川 宏志 571人が参加した、現代歌人協会編『二〇二〇 コロナ禍歌集』が出た。 気管挿管せむと大きく息づけばファイスシールドたちまち曇る 小松 昶 作者は医師でもある歌人。患者が呼吸できるように管を差し込む。 その作業の緊迫感がありありと伝わる。 ウィルスを配るがごとく避けられる郵便配達員の子は戸口にて 佐伯裕子 流行の初期には配達する人が差別されることもあった。その仕事に 就いている子を、心を痛めながら見つめている。 県外者の我は参列許されず父の葬儀を動画にてみる 田中徹尾 コロナ禍の前は悲しみを皆で慰め合うことができた。だが葬儀に行けず 人の死を実感できないことも起きている。 住かより出られざる春さりとても住か失う人多き春 花山多佳子 家に閉じこもる生活はつらいが、その一方で家を失う人が増えている。 自分のことだけでなく、他者の人生を想像することが、今とても大切だと思う。 厳しい現実を詠んだ歌を取り上げたが、けしてそればかりではない。 オンライン会議のために上半身着替えてわたしケンタウロスのよう 川島結佳子 不自由さを嘆くのではなく、新しい日常を好奇心豊かに描いた歌もあるのだ。 このようなさまざまな立場の人々が、今を詠っている。一人一人異なる視点によって 私たちの生きる時代の姿が多角的に記録された一冊になった。
このホームページも開設してから20年の歳月が流れました。新アララギの公式サイトではありますが、 これまであまり本誌とは関わりを持たずに、会員である運営委員によって継続されてきました。その間に このHPをきっかけに入会し、新アララギの会員として各地域で歌を詠み、活躍している方々が多数おられます。 今後も運営に関して変更はありませんが、この度、本誌に「ホームページ通信」というささやかなページを 設けました。一回目は今月発売の5月号に載ります。HPの動静を会員に伝え、皆さんが最終稿に提出された作品から 何首かを紹介したいと思っています。分量は1ペ−ジで2か月分の紹介なので、多くを載せることはできません。 また、このサイトで使われているお名前やハンドルネームをそのまま載せることは避けたいと思います。 ここで勉強されていて、興味をお持ちの方は発行所にご連絡下されば、その月のものを お送りしたいと思っております。次回は8月号になります。お知らせまで。
とつぴんぱらり 雁部 貞夫(新アララギ) 飾るなき媼の歌をよしとする「とつぴんぱらりのぷう」といふ歌 「飾り気なし」と言はば三船敏郎の兵隊帰りの厚き胸板 小柄もて「ゆるしてたもれ」と刻みしは武芸者武蔵に似合はぬ言葉 於通さんは八千草薫あけみは岡田茉莉子にて飾らぬ肌の何と麗はし 煮え切らぬ答へを今日もくり返す首相よダンケルクの撤退決めしチャーチルを見よ
作者、今野英山氏は「新アララギ」の選者、編集長でもあります。かつてこのホームページに 学ばれ、後に本誌に入会して今日に至る氏の作品をご紹介します。豊かな発想による硬質の抒情を 味わってお読みください。ご感想などあれば、掲示板にどうぞ。 平行時空(パラレルワールド) 今野英山 鬼やらふ鍾馗のねぶた座すままに街練りゆかず鎮もる青森 恐山の入り口にある赤い橋うた聞こえくる「渡つた人は帰らない」 灰色の無間地獄をさまよひぬいつかは死なむこの身運びて 宇曽利湖の汀の白き砂の浜ところどころに血の色まじる 彼岸にて子供に還る風車赤青黄色がカラカラ回る 全山が白き手拭にうまるらしあの世の暮らしは涙ぐましも 彼岸での手拭草鞋あふるるかあるかもしれない平行時空(パラレルワールド) 死ねば皆お山に行くと人は言ふ今日とりあへず母を探しに 亡き母の声きく不思議おもひたり吾の知らざる母の苦しみ 預言者もイタコもこの世のセラピスト神とも死者ともなりてふるまふ 友の声父母の声は風にのり嫋嫋と聴く賽の河原に 数多もの地獄もイタコも消えゆきてこの世の不条理見えにくくなる
長年、麻酔科医として働かれた著者の苦悩が凝集する 第三歌集が「現代短歌社」より出版されましたので、 ここにご紹介いたします。 以下帯文より コロナウイルス蔓延の前から病院は戦場であった。 医師の撤退は患者を見捨てることに他ならない。 だが、撤退しなければ、ときにみずからが深い傷を負った。 大学が派遣医師の撤退を決めれば、壊滅的な打撃を被った。 『撤退』自選五首 三施設に麻酔する吾の感染は直ちに医療崩壊招かむ 口きかず咳もなさざる亡骸に触れてならぬか消毒するに 圧・流速曲線をモニターに繰り返し人は穏しく呼吸器に眠る 集中治療の要は麻酔科と執拗に撤退回避を院長迫る 幾万の手術の麻酔を担ひしが吾を覚ゆる幾たりありや 「生涯の師」より三首転載 二年半の麻酔科研修終へし汝わが許を去る心残して ためらはず人に尽くすに努め来し汝にあまたを吾が学びたり 生涯の師と言ひくれしは汝ひとりふるへる肩をたたき別れぬ 歌集『撤退』¥2800+税:「現代短歌社」又は「新アララギ」発行所にて お求めになれます。
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