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敦賀半島 15首 横山季由 新幹線の延伸したる敦賀駅に降りたち広きコンコースゆく 原発を受け入れし見返りの延伸か若狭ルートも検討されをり 友ら住む福井県は原発銀座五箇所十五基受け入れてきぬ フクシマや能登思ひつつ敦賀半島原発三所巡りゆくなり 珠洲原発友ら阻止して能登襲ひし地震や津波に事なきを得ぬ 原発七基受け入れて来し敦賀半島五百二十人もの人らが暮らす バイパスもトンネルも原発マネーによるかいづこも便利な道がつきたり 色が浜の村居のなかの本隆寺庭に寂塚(さびづか)芭蕉の句碑立つ 敦賀半島に芭蕉来りてますほの貝拾ひし江戸の世原発はなし ものものしくガードマン立つ検問所の奧処に原発のドームの屋根見ゆ トンネルをくぐれば立石の海女(あま)の村敦賀半島ここに尽きたり 原発より奥なるこの村事あらば船にて避難をする他はなし 半島の森蔭深く稼働せず廃炉となりし「もんじゅ」建つ見ゆ 岬(さき)削り露はにむき出す美浜原発青く澄みたる海の辺に建つ 吾が泳ぎし若狭の海辺の原発より三十キロ圏にふるさとはあり
ウルトラマラソン 5首 和田 操 マラソンの二倍の距離を優に超え限界に挑む三千人もが 着ぐるみや和尚の恰好して走る遊び心か余裕の百キロ レモン水は一番人気ステイションに一息入れて走り出すランナー 声援も色々あれど若者の「ナイスランです」効果のありぬ ステイションにオレンジ切りて君待てど八十二キロつひに現れず
鶴見 輝子 命見つめて (要旨)本誌会員の岡崎氏は今年の二月に惜しくも急逝されたが、その三番目の歌集である。医師として「血の通う医療」を信条に患者と接する傍ら、認知症の父上を介護した。その体験を背景とする作品は深い味わいと独自の温もりを湛える。「リヴィング・ウィル」は「死を前にした患者が延命処置を受けずに死に至ることを予め表明しておく文書」と記してある。極めて今日的な課題を包含するこの歌集を忘れてはならない。また、独身故に絶たれれてしまうDNAへの嘆きと、その父のDNAが作者にもたらすであろう認知症と狭心症への怖れも繰り返し詠われている。アララギの手堅い詠法を土台に、独自の輝きを放つこの歌集を忘れてはならない。 ・救はむと付されし人工呼吸器が安らなる死を妨ぐる現実 ・冠動脈の広がりゆくをイメージしぬニトロは舌下に苦く溶けつつ
「短歌トラベラー!」第39回 、オーストリア(ウイーン)> (文章は省略) イヤリングの輝きが一瞬を捉えつつ真珠の耳飾りの少女いま振り返る (美術史博物館のフェルメールの絵) 夥しき天使の像の溢れつつシュテファン寺院に差し入る光
文月作品集 「再春歌」 関 貴与 若者の歌に「いいね」が二万人新しき世の来る兆しか 寺子屋に読み書きそろばん学ぶやうメモに書きつつスマホを習ふ 「好きでした」言はれても虚し八十歳共に白髪の同級会に 「好きでした」言ひて寄りくるお爺さん十五歳の時は背の高き人 悦びは忘れぬやうに悲しみは捨ててしまはむと日々を詠み継ぐ
5首めの文字化けは「ろうそく」の「ろう」です。
5首めの文字化けは「蠟」です。
『渚のセレナーデ』の著者近詠 「古都逍遥」 御社の苑に朝の光差しアサギマダラは花の上舞ふ 桂川渡り詣でぬ古代より酒司る神おはす宮 月読の社訪ねて小雨ふる西山沿ひの小径たどりぬ 京和菓子の彩り選ぶ店内に小さく琴の調べ流るる 和蠟燭さがして歩む黄昏の寺町通りに香る白檀 厳かに諷経の声響き満つ夕日差し込む観音堂に 立待の月冴え冴えと照り映えて御寺の甍白くかがやく 白暖簾わけ入りし店に鯖寿司の旬を味はう伏見の酒と 店奥の扉を引けば蹲踞に花を浮かべし坪庭のあり ほんのりと酔ひたるままに歩み行く花見小路にあふぐ眉月
四月四日付けの「ホームページ通信」で選者であり運営委員である大窪和子氏が 「新アララギ全国歌会へのお誘い」を載せましたが、七月六日、七日の二日間に亘り、 全国歌会が盛大に開催されました。広々とした緑の庭園に囲まれた涼しい会場で、 第一評は会員の方から、第二評は選者の方々から、厳しく、温かな歌評を頂いて、 参加者は全員の歌に真摯に向き合いながら和やかに楽しく短歌を学ぶことができました ホームページ会員の方や今は新アララギ会員となられた方々も参加されて大変嬉しく 思いました。来年も多くの方々のご参加をお待ちしております。 今年の「全国歌会賞」の入賞者をご紹介いたします。 天賞 吉田信雄 原発禍の地に生(あ)れ避難の地に死なむこれも運命(さだめ)か夕空仰ぐ 地賞 大窪和子 支へむと日々に結ぶ手あたたかし夫健やかに九十五歳 人賞 渋沢たまき シルバーのピアス煌めく昼下り夏は近づく少女の耳に
「春から初夏の草花をうたう」 「一人静」 入江 晴栄 白木蓮散り過ぎしあとに一人静白き花穂に朝のひかりが 降る雨に濃みどりの葉と白き花穂存在感あり土すれすれに 年々の春の彼岸に花穂立つ一人静よ母のなつかし エッセイ要旨 毎日庭の木々また草花の芽や花に心が和むが、それら全てを植えてくれた祖父、父、母に日々、感謝している。
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