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今回は三宅奈緒子先生の「エーゲ海行」から「1」と「3」をご紹介いたします。
平成8年(1996年)75歳の秋にエーゲ海やギリシャを訪れた時に詠まれた作品
です。70歳で「アララギ」初の女性選者となり、「新アララギ」創刊後は選者、編集
委員として会員からの尊敬と信頼が厚く寄せられました。先生が歌人であることなど全く知らなかった私の高校生時代の担任で、国語の授業が素晴らしくいつも楽しみでした。
「エーゲ海行 1」 三宅奈緒子 第四歌集「春の記憶」より
黄落のロンドンよりただに南下して機の下はるかに光るエーゲ海
そらかぎる低き岩山白く照りアテネの街に秋日みちたり
ま昼まの甲板のうへ白き卓に紺のパラソルに人らさざめく
海わたる夫との旅も無かりしと風打つ天幕の下にわがゐる
出でし港も島々も影おぼろとなり流れ流るる碧き海潮
「エーゲ海行 3」
エーゲ海の小さき島の修道院手すりは朝の露にしめりて
聖ヨハネ修道院の石の階下り来れば海の風が吹き入る
石の階に一人祈禱書を誦みてゐし若き修道士を思ふ出で来て
丘のみちにレースを編みつつ売る女白き幾枚か岩にひろげて
アクロポリスの白きかがやきを仰ぐまち船下りて朝のアテネに入りぬ
さはやぎてアテネの街路にしげる桑したしみ仰ぎその下をゆく
秋ぞらに立つパルテノン列柱の影は濃しその白き基壇に |