作品投稿

作品募集要項

短歌をお寄せ下さい。作品には運営委員による指導があります。以下の手順でお願いします。

(1)「初稿」の提出。1人1か月に5首まで。自作未発表作品であること
(2)「改稿」の提出。「掲示板」での添削等を取り入れた改作。この提出は月3回程度。
(3)毎月20日までに「最終稿」と明記して、1人3首まで(厳守)を、指導を受けた作品の中から自選して、あらためて提出
(4)ハンドルネームを使用してもよいが、混乱が生じやすいので頻繁に変えないこと。
(5)「新アララギ」本誌の会員は、ここに投稿した作品を本誌に二重投稿することのないように注意する。
(6) 投稿された作品は選抜の上、「新アララギ」誌上又はインターネット上のホームページに掲載される。掲載後は原則、削除や消去は不可である。


作品投稿ページ

投稿はこちら

今月の秀歌と選評



 (2025年7月) < *印 旧仮名遣い >

大窪 和子(新アララギ 選者)


 
秀作
 


原田 好美

車椅子夫が押しくれ旧婚の旅行に来たり北海道へ
ジョッキ持ち心合わせて乾杯しジンギスカンに舌鼓打つ


評)
長年連れ添ったご夫婦の旧婚旅行。微笑ましい。しかも妻は車椅子での生活者である。夫の助けによって今ある生活。二首目の「心合わせて」が胸に響き、 これからもお幸せなお二人であるよう、応援目のまえしたくなる。過不足のない詠みぶりも好もしい。
 


ふで

日常にするりと亀裂生まれ出で視界の隅を黒猫よぎる
その昏き青に見とれし硫酸銅はるか昔の理科室の午後


評)
ふと目の端をよぎる見知らぬ黒猫。現実が一瞬空転する、不思議な感覚。二首目は過去を詠んでいるが、硫酸銅を「昏き青」と詠んで、まさに今、目の前に見ているような現実感が生まれた。二首ともに題材の捉え方が巧みである。
 


紅葉

ドジャースをゆっくり見たい土曜日もセミナーセミナー何急ぐらむ
償却をしていく生身だんだんと自分のからだが設備になりゆく


評)
ドジャースの大谷選手、人気者だ。NHKで放映しているので見る人は多いだろうが忙しくて見られない現実。まさに今を詠っていて印象的だ。 二首目、減価償却とは機械設備に言われることだが、生身の自分だって 同じじゃないかとユーモアを交えて嘆く作者の独自性が魅力的だ。
 


つくし

アメリカは夢と希望の国だったキング牧師の I have a dream
公園にかつての我を探しおり遊具に散らばる子ら眺めつつ


評)
「I have a dream」は人種差別や不平等でない社会を願うキング牧師の名言の一つである。今混乱を極めているように見えるアメリカを憂う歌。二首目は公園に幼い自分をみつけようとする、一抹の寂しさを秘めた温かい歌だ。
 


湯湯婆

望まぬも気ままに旅に出る自由夫も猫らも亡くして得たり
玄関に猫の気配を感じたり明かりをつけて向き合う現実


評)
一人暮らしになってしまった作者だが、嘆いてばかりはいない。自由に旅にでられると自分を励ます。しかし、暗がりの中の我が家を見て賑やかだった過去を思う。二首目の下の句が何とも言えない哀愁を感じさせる。
 


はな

夫亡くし毎朝コーヒー飲みに行く友の寂しさ嶺の白雲
立葵好きな三人で「この子は」とスマホ見せ合い花自慢する


評)
夫を亡くした寂しさをコーヒーで紛らわす友を作者自身も寂しく思っている。「嶺の白雲」にそれが感じられ、ここが効いている。二首目は立葵の花の鉢を子供みたいに言い合って自慢し合う、三人の姿が目に見えるようで楽しい歌。
 

佳作



鈴木 英一

渡岸寺の観音様はフェノロサの賞賛による初の国宝
筑波山は二峰頂く神体山関東平野のランドマークなり


評)
フェノロサは日本各地の仏像を廃仏毀釈などから救っているという。渡岸寺の十一面観音もそうなのかと納得した。二首目は筑波山を関東平野のランドマークと捉えたところが面白い。それほど高くはないが、平野の中に際立つ山である。
 


笹もち

沢べりに希望のごとく親指を宙に浮かべばホタルがとまる
一匹のアリが朝日の道を行くひとりの旅人と呼んでおこうか


評)
蛍や蟻といった小さな虫たちの心に触れるような、作者の細やかな優しさにほのぼのとする。しかし二首ともに作者のひとりよがりな視点がすこし気になった。「希望」も「旅人」も蛍や蟻には関係がないでしょう。ちょっと考えてみて。
 


夢子

強き声疲れも知らず応じくるAIの愛に老いは照り映ゆ
寝る前に今日もありがとう言うたびにすぐ帰り来る優しき声よ


評)
AIと親しむ様子は今風で面白いし楽しい。しかし、AIはあくまでも人間が作り出した無機物である。それと生物のように親しむ自分を少しだけ客観視する一首があると更に深みのある連作になると思う。
 
 
寸言

 7月18日付けの西日本新聞紙上に、北九州市の新アララギ会員、岡松末子さんの記事が掲載されました。御年106歳の歌人です。一読頂き、皆さまの歌作のご参考になればと、ここにほんの一部ですがご紹介したいと思います。

 106歳 短歌に託す平和

(これの世に八十年の平和なり百六歳の生誕祝ふ)

 岡松末子さんは昨年8月15日106回目の誕生日を迎えた喜びを短歌につづった。入所する施設のベッドで31音の言葉を練る現役の歌人。創作意欲は衰えることなく。この夏もほぼ毎日ノートを開き、窓辺で鉛筆を握っている。何げない日常や季節の気付きを歌にしているが、その根底には亡き夫への思いがあった。

(バシー海峡に思ひは深しこの海に夫は戦死す輸送船と共に)

            大窪 和子(新アララギ 選者)

 
バックナンバー