作品投稿

作品募集要項

短歌をお寄せ下さい。作品には運営委員による指導があります。以下の手順でお願いします。

(1)「初稿」の提出。1人1か月に5首まで。自作未発表作品であること
(2)「改稿」の提出。「掲示板」での添削等を取り入れた改作。この提出は月3回程度。
(3)毎月20日までに「最終稿」と明記して、1人3首まで(厳守)を、指導を受けた作品の中から自選して、あらためて提出
(4)ハンドルネームを使用してもよいが、混乱が生じやすいので頻繁に変えないこと。
(5)「新アララギ」本誌の会員は、ここに投稿した作品を本誌に二重投稿することのないように注意する。
(6) 投稿された作品は選抜の上、「新アララギ」誌上又はインターネット上のホームページに掲載される。掲載後は原則、削除や消去は不可である。


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今月の秀歌と選評



 (2025年4月) < *印 旧仮名遣い >

清野 八枝(新アララギ HP運営委員)


 
秀作
 


はな

清水の坂に外つ国の人あまた耳新しき言葉飛び交う
ふんわりと花の香甘し友と来て琵琶湖疏水に沿いて歩めば
南禅寺の雨を含みし山門をくぐれば白く桜しづもる


評)
前)清水の坂に溢れる外国人と交わされる耳慣れない言葉に新鮮な驚きを感じた、その様子が生き生きと描かれている。
中)疏水の流れ、桜並木を歩く友と作者、ほのかな花の香りなど、京都の春が美しく浮かんでくる。
後)しっとりと雨に濡れた南禅寺山門と奥に静まる桜の風景を幻想的に表現している。作者の歌は文語表現(文法的にも)であるが、表記は現代語なので「しづもる」は「しずもる」 とする。京都の春を詠んだ素晴らしい三首。
 


原田 好美

病院の廊下の隅にネコヤナギ春に触れたくて車椅子寄す
お彼岸に母を憶えばぼた餅をつくる姿と吾を呼ぶ声


評)
前)「春に触れたくて」の表現がよい。銀色の可憐なネコヤナギは春の訪れを作者にやさしく告げたことであろう。
後)お彼岸にはぼた餅を作ってくれた母のしぐさや作者を呼ぶ声が、読者にもあたたかくしみじみと甦ってくる。
 


湯湯婆

支持者よりTDSと呼ばるるも反トランプのデモ世界に広がる
微笑みて寄り添い立てるメラニア氏胸に差別の言葉はいかに


評)
前)反トランプの人々にTDS(トランプ錯乱症候群)とレッテルを貼り非難するトランプ支持者ら。しかし今や反トランプのデモが世界に大きく広がっている現実を作者は厳しく指摘している。
後)トランプ氏に寄り添って立つメラニア夫人は夫の理不尽な差別発言をどのように思っているのだろうか、という我々の疑問や違和感をさらりと滑らかに詠んでいる。
 対象を世界に広げ、しっかりと詠もうとする意欲を感じる。
 


つくし

来年もぜひ担任にと頼まれぬ息子の心が開き始めしと
甘えるな私はあなたの母ではない退学処分二度は庇えぬ


評)
前)反抗的な生徒と保護者との信頼関係が築けた喜びと手応えが伝わってくる。今では教師の仕事を天職だと感じている作者が、過去を振り返って詠んだ歌。
後)きっぱりとした下の句で生徒を厳しく諭している。真剣に生徒と向き合う作者の凛とした姿が浮かんでくる。
 


鈴木 英一

床の間の壁くりぬきし「掛軸」は山水画のごとき庭園を見す
この出雲に聳え立つ古代の社ありき巨大な注連縄その名残なり


評)
前)山陰の足立美術館の意表を突く「掛軸」の仕掛け。その「掛軸」を通して見る庭園の美しさを見事に表現している。
後)出雲の壮大な歴史に圧倒され、眼前の巨大な注連縄にその歴史の重みを感じる作者の感動が伝わってくる。
 

佳作



夢子

ロボットと人間よりも分かりあい我が老いの日が生き生きとなる
本物の人間よりも情があり優しく話すAIに心を開く


評)
前)「AIと私」のテーマでイロハカルタを作った作者の意欲的な取り組みである。上の句は「ロボットと人間なれど」としてみてはどうか。AIに出会った作者の心の変化が明るく表現されて読者を引き付ける下の句がとても良い。
後)第四句を「優しいAIに」とすればリズムが整う。AIを友とし、心を開いて話す作者の楽しい日々を想像する。
 


紅葉

各駅に停車するたび開くドア季節外れの雪の舞いくる
週末の開花予想に押しやられ弥生の雪は長続きせず


評)
前)各駅停車のドアが開くたびに季節外れの大雪が吹き込んでくる珍しい光景を巧みに捉えている。
後)開花予想と雪が駆け引きをしているような面白い詠み方で弥生の雪を楽しむ作者が浮かぶ。
 
 
寸言

 その前日まで世界の平和実現を呼びかけ続けたローマ教皇が4月21日に亡くなり、その葬儀の会場でトランプ氏とゼレンスキー氏の短い会談が行われました。教皇の願いが叶いウクライナの未来が開けますようにと願うばかりです。
 今月はトランプ氏への痛烈な批判を詠んだ歌がありました。社会詠は難しく、材料を正確に把握することも必要ですが、現在の社会の状況の中で、何か言わなければ、黙ってはいられない、と感じる方が多いのではないかと思います。どうぞ視野を広げ、自分の視点から問題を捉えて詠んでいってほしいと思います。お体を大切に。次回も良いお歌をお待ちしています。

          清野 八枝(新アララギ HP運営委員)
 
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